Vercel CDN、待望の専用ダッシュボードがリリース
Vercelを利用している開発者なら、一度はこんな不便を感じたことがあるのではないでしょうか。CDNキャッシュをパージするにはプロジェクト設定の奥深くまで潜る必要があり、グローバルなトラフィック分布を一目で把握するには複数のページを行き来しなければならない。特に「このルーティングルールを変更するには、またデプロイし直さないといけないのか…」という悩みは、本当によく聞かれる質問でした。
そんな悩みに終止符を打つアップデートがやってきました。VercelがCDN専用のダッシュボードを公開したのです。このアップデートは単なるUIの改善ではなく、プロジェクトの運用効率を劇的に向上させる機能が詰まっています。本記事では、具体的に何が変わったのか、実務でどう活用すれば良いのかを詳しく解説します。
参考資料: Vercel公式チェンジログ

3つのコア機能:概要、キャッシュ、ルーティング
新しいCDNダッシュボードは、大きく3つのタブで構成されています。それぞれの役割と、コードとの連携方法を見ていきましょう。
1. 概要(Overview) – グローバルトラフィックを地図で可視化
Vercel Regionsごとのトラフィック分布が、リアルタイムの地図で確認できるようになりました。単なるリクエスト数だけでなく、キャッシュヒット率(Cache Hit Ratio)、オリジンリクエスト数(Origin Requests)、転送データ量(Data Transfer) といった主要なパフォーマンス指標も一目で把握できます。
2. キャッシュ(Caches) – パージも設定もシンプルに
従来はプロジェクト設定 > キャッシュメニューでしかできなかったキャッシュパージ機能が、CDNダッシュボードに統合されました。Vercel CDNは複数のキャッシュレイヤー(Edge Cache、Static Cacheなど)を持っていますが、レイヤーごとに選択的にパージできるようになりました。
// Vercel CLIを使ったキャッシュパージの例
// 特定のパスのみをパージする場合
npx vercel purge --path /api/data
// 全キャッシュを一度にパージ
npx vercel purge --all
// 特定のキャッシュレイヤーのみパージ(例: Edge Cache)
npx vercel purge --layer edge
3. プロジェクトレベルルーティング – デプロイ不要でルールを変更
この機能が最も印象的です。新しいデプロイをせずに、ルーティングルールをリアルタイムで変更できます。例えば、特定のAPIレスポンスにヘッダーを追加したり、外部APIにリダイレクトするルールを即座に適用できます。
// vercel.json のルーティングルール例
// 新しいダッシュボードでも同じルールをUIで編集可能
{
"routes": [
{
"src": "/api/(.*)",
"dest": "https://external-api.example.com/$1",
"headers": {
"x-custom-header": "value"
}
}
]
}
緊急のルーティング変更が必要な場合、デプロイサイクルを待つ必要がなくなりました。運用中のサービスで特に重宝するでしょう。

実務での活用Tipsと注意点
🎯 こんな使い方がおすすめ
- A/Bテスト用ルーティング: デプロイなしで特定パスのトラフィックを別バージョンに振り分けられるため、リアルタイムA/Bテストが可能です。
- キャッシュ戦略の最適化: 概要タブでキャッシュヒット率が低いリージョンを発見したら、該当リージョンのキャッシュ設定を即座に調整できます。
- 障害対応: 特定のAPIがダウンした場合、ルーティングルールを即座に変更して静的ページや代替APIにトラフィックを迂回させられます。
⚠️ 注意点
- ルーティングルールの優先順位: ダッシュボードで追加したルールは
vercel.jsonのルールより優先されます。意図しない動作を防ぐため、常に全体のルールを確認する習慣をつけましょう。 - キャッシュパージのコスト: 大規模プロジェクトで頻繁にキャッシュパージを行うと、オリジンサーバーに負荷がかかる可能性があります。必要なパスのみ選択的にパージするのが賢い使い方です。
- チーム権限管理: ルーティングルールを誰でも編集できるようにすると危険です。Vercelのチーム設定でCDNダッシュボードへのアクセス権限を適切に制限しましょう。
日本開発コミュニティでの適用文脈
日本では特に LINEメッセージングAPI、PayPay決済、楽天APIなど外部サービスとの連携が多いサービスで、このアップデートが有用です。例えば、年末年始のトラフィック急増時に特定APIのルーティングを即座に変更したり、キャッシュ設定を調整することで柔軟に対応できます。また、国内CDNサービス(例:さくらインターネット CDN、Cloudflare)と比較すると、Vercel CDNのグローバルリージョンカバレッジと統合ダッシュボードは大きな強みです。
合わせて読みたい記事

まとめ:CDN運用の新しいスタンダード
Vercel CDNダッシュボードは、単なる「見た目が良いUI」を超えて、運用者の作業効率を実質的に改善するツールです。特に、デプロイなしでルーティングを変更できる点は、CI/CDパイプラインが複雑な大規模プロジェクトで大きな価値を発揮します。
すでにVercelでプロジェクトを運用している方は、ぜひCDNタブを開いてみてください。以前よりもはるかに直感的でパワフルになった姿を確認できるはずです。
次のステップ
- Vercel CDNのキャッシュレイヤーごとの動作原理を公式ドキュメントで学習してみてください。
vercel.jsonのルーティングルール構文を深掘りし、ダッシュボードとの連携をテストしてみましょう。- Vercel Edge Functionsを活用して、より高度なルーティングロジックを実装するのもおすすめです。