Spec-Driven Developmentが再評価される理由
昨年Conductorが登場したときの主張はシンプルでした。「プロジェクトの認識を揮発性のチャットログから取り出し、バージョン管理されたMarkdownファイルに移そう」——これがSpec-Driven Development(SDD)の起点です。
AIコーディングツールが氾濫する中で、開発者が本当に困っているのはコード生成速度ではありません。コンテキストが次のセッションに引き継がれないことです。昨日Claudeと設計したアーキテクチャを、今日Cursorで一から説明し直す。その説明もまたどこかへ流れていく。Conductorはこの問題をspec.mdとplan.mdという永続的な成果物で解決しようとしました。
今回のアップデートはその次の段階です。拡張機能(Extension)から**プラグイン(Plugin)**へと形態を変えました。単なる名称変更ではなく、ワークフロー自体が変わる転換です。根拠資料はGoogle Developers Blogの原文で確認できます。

ExtensionとPlugin、何が変わったのか
1. コマンドシーケンスの制約が外れた
従来のConductorは拡張機能だったため、決められたコマンド順序に従う必要がありました。/conductor:planのようなコマンドを順番に呼び出す方式です。今後は**会話型(conversational)**に変わります。
# インストール自体は相変わらず一行です
agy plugins install https://github.com/gemini-cli-extensions/conductor
インストール後は、機能要件をそのまま話しかけるだけです。AIが適切にコンテキストを更新し、スペックを生成し、プラン内の完了タスクをチェックオフします。開発者はアーキテクチャに集中できます。
2. ツール依存からの解放
実務で最も体感差が大きい変化です。従来はGemini CLI専用でした。プラグイン化により、Antigravity CLIをはじめ複数のツールで同一のConductorを利用できます。
# プロジェクトルートに保持される成果物
project/
├── spec.md # アーキテクチャスペック(バージョン管理対象)
├── plan.md # タスクプラン(チェックリスト形式)
└── .conductor/ # 共有設定
3. コンテキストがツールを跨いで持続する
ツールAで開始したワークフローをツールBで引き継いでも、コンテキストの損失がありません。共有設定と開発トラックがそのまま維持されるためです。複数のAIツールを併用するチームにとっては決定的な利点です。

プラグインアーキテクチャの比較
| 項目 | 従来のExtension | 新Plugin |
|---|---|---|
| 配布単位 | Gemini CLI専用拡張 | skills + rules + MCP servers + hooksの統合パッケージ |
| インタラクション | コマンドシーケンスベース | 会話型、動的コンテキスト生成 |
| ツール互換 | Gemini CLI限定 | Antigravity CLIなどマルチツール |
| 成果物 | spec.md, plan.md | 同一(永続性維持) |
| コンテキスト移植 | 不可 | ツール間でシームレス移行 |
| 導入障壁 | コマンド習得が必要 | 自然言語で開始可能 |
注意事項
- 「会話型」は「何でもあり」ではありません。 spec.mdとplan.mdは依然として厳格なフォーマットに従う必要があり、AIが勝手にスペックを書き換えないようレビュー習慣は維持すべきです。
- プラグインである以上、権限スコープが広がります。 hooksとMCP serversが同梱されるということは、ファイルシステムやネットワークへのアクセス権限も付随するということです。社内セキュリティポリシーがあるチームは、導入前の監査が必要です。
- まだ初期段階です。 Antigravity CLI対応は発表されましたが、他CLIへの拡張は今後のロードマップ次第です。
次の学習ステップ
- 公式Codelabでプラグイン機能を実際に試す
- チームプロジェクトの1つにspec.md/plan.mdを導入し、2週間運用する
- 複数のAI CLIを併用するワークフローを実験し、コンテキスト移植性を検証する

まとめ
Conductorの今回の移行は、「拡張機能をプラグインに変えた」という技術的事実よりも、SDDをツール依存から解放した点が本質です。AIコーディングツールが乱立する現在、プロジェクトのコンテキストをどこに置くかは、今後数年間で最も重要な設計判断の一つになるでしょう。